家族に「そろそろ免許を」と言われた。自分でも、少し不安がある。
でも、車がないと買い物にも病院にも行けない。

先に、いちばん大事なことを書きます。
返すか返さないかを、一度に決めないでください。

この話がこじれるのは、「返す・返さない」の二択にしてしまうからです。
実際には、その間にいくつも段階があります。

この記事では、段階の分け方と、どこに何を聞けばいいかを書きます。
金額や特典は書きません。住んでいる場所と時期で変わるからです。

この記事は、考える順番と相談先を整理したものです。制度の解説ではありません。

手続きの内容・必要なもの・費用・高齢者講習や検査のことは、ここに書きません。制度は変わりますし、自治体の支援は住んでいる場所で違います。書いた時点で古くなり、間違った情報を出し続けることになるからです。

最新の正しい内容は、住んでいる都道府県の警察と、市区町村の窓口で確認してください。下に、何をどこに聞けばいいかの表を作りました。

先に|返したあとに残るものがある

身分証がなくなる、という心配は要りません

警察庁の案内です。

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項目 書かれていること
誰が返せるか 免許が不要になった人、加齢による身体機能の低下等で運転に不安を感じる高齢ドライバー
返せない場合 停止・取消しの行政処分中の人、処分の基準等に該当する人等は自主返納できない
運転経歴証明書 自主返納した人や更新せず失効した人は交付を受けられる
受けられない場合 返納・失効から5年以上が過ぎた人、交通違反等により取消しとなった人等
身分証として 平成24年4月1日以降に交付されたものは、免許証に代わる公的な本人確認書類として使える

※警察庁「運転免許証の自主返納について」(2026年9月10日 閲覧)

返納から5年を過ぎると

運転経歴証明書は受けられません

返すなら、証明書の申請も同じタイミングで進めます。

返す返さないの二択にしない

いきなり全部やめるから、話がまとまりません

夜だけ乗らない、高速に乗らない、遠出はやめる。間の段階があります。なお自主返納した人を対象に、地域の実情に応じた支援が自治体や事業者によって行われているとされています。申請場所や必要書類は、各都道府県警察の運転免許センター等に問い合わせてください。

返す・返さないの前に、段階がある

免許を返すのは、いちばん最後の段階です。
その手前に、やれることがいくつもあります。

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段階 やること 何が変わるか
第1段階 夜の運転をやめる 暗さと、光のまぶしさの影響を受けなくなる
第2段階 高速道路と、知らない道をやめる とっさの判断が要る場面を減らす
第3段階 雨の日・混む時間をやめる 見えにくさと、判断の数を減らす
第4段階 週に1日、車を使わない日を作る 車なしで暮らせるかを、実際に試せる
第5段階 代わりの足を先に確保する ここができていないと、返納は現実的にならない
第6段階 返納する ここで初めて手続きの話

第5段階が、この話のいちばん大事なところです。

「返納したら生活できない」というのは、言い訳ではなく、たいてい本当のことです。買い物・病院・郵便局。車がないと行けない場所が実際にあります。

だから、順番があります。代わりの足ができてから、返す。先に返させて、あとから困らせるのは、うまくいきません。

第4段階の「車を使わない日」が、いちばん役に立つ

これは、誰の許可も要らず、今週からできます。

週に1日だけ、車を使わない日を決めてください。
その日に、実際に買い物へ行ってみてください。

そこで分かることが、いくつもあります。

  • 歩いて行ける店に、何が売っているか
  • バスが1日に何本あるか。何時に終わるか
  • タクシーを呼んだら、どのくらいで来るか
  • 荷物を持って帰れるか(ここでつまずく人が多い)
  • 雨の日はどうするか

「車がないと無理」なのか、「車があると楽」なのか。
この2つは、まったく違います。
やってみないと、どちらか分かりません。

代わりの足を、先に用意する

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困ること 代わりになりうるもの どこで聞くか
食料品の買い物 ネットスーパー/生協の宅配/店の配送サービス 近所のスーパーのサービスカウンター
重い物(米・水・洗剤) 通販でまとめて届けてもらう
通院 家族の送迎/介護タクシー/通院の送迎サービス 地域包括支援センター/かかりつけの病院
近所の移動 コミュニティバス/乗合タクシー/シルバーカー 市区町村の窓口
急な用事 タクシー(電話番号を冷蔵庫に貼っておく)
薬の受け取り 薬局の配達/家族が代わりに受け取る かかりつけ薬局

この表で、いちばん見落とされるのが通院です。

買い物は宅配で代われますが、病院は本人が行かないといけません。

だから、通院の足を先に決めてください。ここが決まらないまま返納すると、受診の回数が減ります。それは、免許の話より大きな問題になります。

相談先が分からなければ、「地域包括支援センター」で聞いてください。場所は、市区町村の窓口で教えてもらえます。

「自分の足」を残したい場合|電動アシスト自転車を借りる手

上の表は、どれも「誰かに運んでもらう」方法です。ただ、自分で動ける足を残したいという気持ちは、それとは別にあります。

電動アシスト自転車は買うと15万円を超えることがありますが、月額のレンタルなら、車を手放す前に「車のない生活」を試す道具としても使えます。合わなければやめられます(下の契約の注意を見てください)。

電動アシスト自転車の定額レンタル スマイルサイクル

電動アシスト自転車の定額レンタル スマイルサイクル

買わずに月額で使える電動アシスト自転車。自宅まで届けて説明つき。

  • 購入すると15万円超の電動自転車を、必要な期間だけ使える
  • 賠償責任保険つき。バッテリーが劣化したら無償で交換
  • 対応は関西2府3県のみ。6ヵ月未満でやめると残額がかかる
料金 月額3,500円(税込・レギュラータイプ)+配送料が別途
対応エリア 関西2府3県のみ(公式サイト表記)
契約の注意 6ヵ月以内の解約は、6ヵ月分相当の残額を支払う
こんな人に 返納の前に、車のない生活を試したい人

車のない生活を試す

自転車にも転倒の危険はあります。ヘルメットの着用と、夜間の運転を避けることは、車と同じように決めごとにしてください。

車を持ち続ける費用を、一度書き出してみる

金額は人によって違うので、ここには書きません。
代わりに、書き出す項目を並べます。

  • 自動車税(年に1回)
  • 車検(かかった年の分を、2年で割る)
  • 自賠責と、任意保険
  • 駐車場代(借りている場合)
  • ガソリン代(1年分)
  • タイヤ・オイル・修理

これを1年ぶん足すと、月あたりの金額が出ます。

そのうえで、「その金額で、月に何回タクシーに乗れるか」を計算してみてください。
思っていたより多い、という人がいます。

これは、返納をすすめるための計算ではありません。

「車がないと損」だと思い込んでいる場合に、実際の数字を見るための作業です。

逆に、計算した結果「やっぱり車のほうが安いし便利だ」となることもあります。それはそれで、はっきりした答えです。迷ったままでいるより、ずっといいです。

家族が心配している場合

ここは、言い方で結果が変わります。

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✗ 通りにくい言い方 ◯ 通りやすい言い方
「危ないから、やめて」 「もし事故を起こしたら、どうなるか一緒に考えたい」
「もう歳なんだから」 「夜の運転だけ、やめてみない?」(段階を提案する)
「返納して」 「返したあと、どうやって病院へ行くか先に決めよう」
鍵を隠す・勝手に売る やらない。信頼が壊れて、話ができなくなる

「危ない」と言われて、素直に受け入れられる人はいません。

運転をやめることは、「行きたいところに、行きたいときに行く」自由を手放すことです。それを、能力の否定と一緒に言われると、話が止まります。

だから、能力の話をせずに、段階と、代わりの足の話をしてください。

そして、次の場合は家族だけで話さないでください。同じ道で迷う/車の傷が増えているのに、本人が覚えていない/信号や標識の見落としが増えた/約束の時間や場所を間違えることが増えた。

この場合は、かかりつけの医師に相談してください。家族が言うより、医師から言われるほうが通ることがあります。そして、運転以外にも見るべきことが出てくるかもしれません。

何を、どこに聞けばいいか

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聞きたいこと 聞く先
返納の手続き・持ち物・場所 住んでいる都道府県の警察/最寄りの警察署
運転経歴証明書のこと 同上(手続きと同時にできることが多い)
高齢者講習・検査のこと 同上(制度が変わるので、必ず最新を確認)
自治体の支援(バス券・タクシー券など) 市区町村の窓口(内容も金額も地域で違う)
通院の足 地域包括支援センター/かかりつけの病院
買い物の宅配 近所のスーパー/生協
認知機能が心配 かかりつけの医師
どこに聞けばいいか分からない 市区町村の総合窓口(そこから案内してもらえます)

「運転経歴証明書」だけ、先に書いておきます。

免許を返したあとに申請できる証明書で、身分証明書として使えます。

「返したら身分証がなくなる」と心配している人がいますが、そこは代わりがあります。申請の方法と期限は警察に確認してください。

免許の返納について、よくある質問

一度返したら、もう二度と運転できませんか

そのとおりです。返納は、取り消しの申請です。

また運転したくなったら、最初から取り直すことになります。

だから、急がないでください。この記事の第1段階から第5段階を順にやってみて、それでも大丈夫だと分かってからです。期限に追われて決めるものではありません。

自治体からもらえる特典は、どのくらいですか

ここには書きません。住んでいる場所で、まったく違うからです。

バスの割引がある地域、タクシー券が出る地域、商品券がある地域、何もない地域があります。そして、内容は年度で変わります。

市区町村の窓口で「免許を返納したら、何か支援がありますか」と聞いてください。電話で聞けることが多いです。

親が、話を聞いてくれません

能力の話をしていないか、振り返ってみてください。

「危ない」「もう歳だ」は、本人にとって否定されている言葉です。そこから話が進むことは、あまりありません。

代わりに、段階を提案してください。「夜だけやめてみない?」なら、返納より受け入れられやすいです。

そして、迷う様子や覚えていないことが増えているなら、かかりつけの医師に相談してください。家族だけで抱えないでください。

返納したら、生活できなくなりませんか

その心配は、正しいです。

だから、この記事では「代わりの足を先に確保する」を第5段階に置いています。返してから考えるのでは、順番が逆です。

まず、週に1日だけ車を使わない日を作ってください。そこで困ったことが、そのまま「先に用意しておくもの」のリストになります。

まとめ|返す・返さないの二択にしない

  • 返納はいちばん最後の段階です。その手前に、夜だけやめる・高速をやめるがあります
  • 週に1日、車を使わない日を作ってください。誰の許可も要らず、今週からできます
  • 通院の足を先に決めてください。ここが決まらないと、受診の回数が減ります
  • 手続き・支援の内容は、都道府県警察と市区町村の窓口で確認してください

同じ道で迷う・車の傷が増えているのに覚えていない・約束の間違いが増えた場合は、
家族だけで話さずに、かかりつけの医師に相談してください。

暮らしの足と、家族のことで、ほかに気になる場合